ぼく、高校へ行きたい
金曜日、Jくんが学校に来ました。計算ドリルがまだ終わっていないので、春休みだけれど学校に呼びました。
Jくんは、ちゃんと約束の時間に、しかもランドセルで学校にやってきました。
よーし、やる気だなと、喜んで問題に向かわせると、何だか気持ちが入っていません。
文章題の問題を読ませても、同じところを間違えてばかり。
「あめが何こありますか。」
正しくは、「あめが何こかあります。」ですが、「あめが何こありますか。」という言い方に慣れているので、「か」がどうしても最後に行ってしまうのです。
日本の子どもの場合、間違いを指摘すればすぐに直せるけれど、言い慣れないパターンの表現が出てきた場合、ボリビア人のJくんは、何度も間違いを繰り返します。
「もう一度、よく見て。」
「あめが何こありますか。」
言い慣れていないのはわかるけれど、間違いが5回・6回…と続くのは、いくら何でも気の抜き過ぎ。
春休みだからというのはわかっています。でも、ここでこのペースを続けさせてはだめ。
そこで、ちょっと、真面目な顔をしてJくんの顔を覗き込み、
「Jは、高校行きたい?」
と聞いてみました。
2年生には早いかなとも思ったのですが、今、Jにはこのことを考えるチャンスを与えた方がいいと思いました。
Jくんは、きょとんとしています。
「先生は、この一年、Jが他の子と同じだけ勉強をやり終えないと、絶対に合格にしなかったやろ。クラスで一番しかったのは、Jやろ。どうして、きびしくしてきたかわかる?」
「それは、Jのお母さんの願いを知ってるからやで。」
Jくんは、まだきょとんとしていますが、目が真面目になりました。
「Jのお母さんは、Jに日本の高校を出てほしいと願っている。できたら大学へも行ってほしいと思ってる。だから、Jとおねえちゃんのために、夜遅くまで働いてる。」
「Jのお母さんは、自分が働いている間に、Jがゲームばかりしていることをとても心配している。」
「先生は、自分もお母さんだから、Jのお母さんの気持ちがとてもわかる。でも、一人だけ、お母さんの気持ちがわからない子がいる。だれだかわかる?」
「ぼく!?」
「そう、J。」
「お母さんは、Jのことを一生懸命考えてるけど、Jはそんなお母さんの気持ちを知らない。」
「…。」
「日本では、高校を出ていないと、なれる仕事がとても少なくなる。高校を出ると、なれる仕事が増える。だから、みんな、高校へ行く。」
「中学校の先生がよく言うけど、外国人の子どもに、『残っていきな、そうしたらちゃんと勉強教えてあげるから。』と言っても、なかなか残っていかない。だけど、高校に入るテストの前になると、『先生、ぼくも高校へ行きたい。』と言う。でも、そのときは、もう遅すぎる。」
「友達はみんな高校へ行くけれど、自分だけ行けない子もいる。」
「今、このクラスで、一番危ないのはJだよ。」
「えっ!!○○ちゃんは?」
「○○ちゃんは、勉強にとても苦労している。でも、宿題は毎日忘れずにきちんとしてくるし、合格するまで、休み時間でも粘って粘ってやり直している。先生がしからなくても、自分から、直しのプリントをもってやってくる。だから、中学校の先生が、『この子はこんなに一生懸命勉強する子です。』と、高校へ持っていく書類に書いてくれるから、きっと大丈夫。」
「うそは書けないから、Jには書いてくれない。」
「…。」
「△△くんは?」
「△△くんは、さぼっているように見えるけど、いざというときには、けっこう一生懸命している。だから、ドリルももう合格した。」
「…。」
「だから、Jが一番危ない。このままだと、高校へ行けないかもしれない。」
「みんなの高校が決まって、『ぼくも行きたい。』と言っても、そのときは、もう遅い。」
「だけど、今なら間に合うよ。Jは、ちゃんと勉強がわかる力をもってる。Jが一生懸命やれば、高校へいける力は、ちゃんとある。だけど、日本の子よりたくさん勉強しないとだめ。」
「…。」
「…。」
「ぼく、高校へ行きたい!!」
「本当に!?」
「うん、本当に。」
「じゃあ、本気で、問題を読んでみな。」
「あめが何こかあります。」
「ほらね。本気を出すと、違うやろ。」
その後、この間、自分から漢字プリントをやろうとしたときのことを褒めました。
「だけど、合格しなかった。」
「そんなこと、どうでもいい。合格したいと思ったことが大切なん。」
がんばれ!!
自分の道を切り拓くのは、自分自身でしかないのだから。
2時間勉強した後、
「先生、残り、家でやってきていい?」
と言って、Jくんは帰って行きました。
これからも、とんとん拍子にはいきません。でも、少しわかったかな、お母さんの願いが。
Jくんは、ちゃんと約束の時間に、しかもランドセルで学校にやってきました。
よーし、やる気だなと、喜んで問題に向かわせると、何だか気持ちが入っていません。
文章題の問題を読ませても、同じところを間違えてばかり。
「あめが何こありますか。」
正しくは、「あめが何こかあります。」ですが、「あめが何こありますか。」という言い方に慣れているので、「か」がどうしても最後に行ってしまうのです。
日本の子どもの場合、間違いを指摘すればすぐに直せるけれど、言い慣れないパターンの表現が出てきた場合、ボリビア人のJくんは、何度も間違いを繰り返します。
「もう一度、よく見て。」
「あめが何こありますか。」
言い慣れていないのはわかるけれど、間違いが5回・6回…と続くのは、いくら何でも気の抜き過ぎ。
春休みだからというのはわかっています。でも、ここでこのペースを続けさせてはだめ。
そこで、ちょっと、真面目な顔をしてJくんの顔を覗き込み、
「Jは、高校行きたい?」
と聞いてみました。
2年生には早いかなとも思ったのですが、今、Jにはこのことを考えるチャンスを与えた方がいいと思いました。
Jくんは、きょとんとしています。
「先生は、この一年、Jが他の子と同じだけ勉強をやり終えないと、絶対に合格にしなかったやろ。クラスで一番しかったのは、Jやろ。どうして、きびしくしてきたかわかる?」
「それは、Jのお母さんの願いを知ってるからやで。」
Jくんは、まだきょとんとしていますが、目が真面目になりました。
「Jのお母さんは、Jに日本の高校を出てほしいと願っている。できたら大学へも行ってほしいと思ってる。だから、Jとおねえちゃんのために、夜遅くまで働いてる。」
「Jのお母さんは、自分が働いている間に、Jがゲームばかりしていることをとても心配している。」
「先生は、自分もお母さんだから、Jのお母さんの気持ちがとてもわかる。でも、一人だけ、お母さんの気持ちがわからない子がいる。だれだかわかる?」
「ぼく!?」
「そう、J。」
「お母さんは、Jのことを一生懸命考えてるけど、Jはそんなお母さんの気持ちを知らない。」
「…。」
「日本では、高校を出ていないと、なれる仕事がとても少なくなる。高校を出ると、なれる仕事が増える。だから、みんな、高校へ行く。」
「中学校の先生がよく言うけど、外国人の子どもに、『残っていきな、そうしたらちゃんと勉強教えてあげるから。』と言っても、なかなか残っていかない。だけど、高校に入るテストの前になると、『先生、ぼくも高校へ行きたい。』と言う。でも、そのときは、もう遅すぎる。」
「友達はみんな高校へ行くけれど、自分だけ行けない子もいる。」
「今、このクラスで、一番危ないのはJだよ。」
「えっ!!○○ちゃんは?」
「○○ちゃんは、勉強にとても苦労している。でも、宿題は毎日忘れずにきちんとしてくるし、合格するまで、休み時間でも粘って粘ってやり直している。先生がしからなくても、自分から、直しのプリントをもってやってくる。だから、中学校の先生が、『この子はこんなに一生懸命勉強する子です。』と、高校へ持っていく書類に書いてくれるから、きっと大丈夫。」
「うそは書けないから、Jには書いてくれない。」
「…。」
「△△くんは?」
「△△くんは、さぼっているように見えるけど、いざというときには、けっこう一生懸命している。だから、ドリルももう合格した。」
「…。」
「だから、Jが一番危ない。このままだと、高校へ行けないかもしれない。」
「みんなの高校が決まって、『ぼくも行きたい。』と言っても、そのときは、もう遅い。」
「だけど、今なら間に合うよ。Jは、ちゃんと勉強がわかる力をもってる。Jが一生懸命やれば、高校へいける力は、ちゃんとある。だけど、日本の子よりたくさん勉強しないとだめ。」
「…。」
「…。」
「ぼく、高校へ行きたい!!」
「本当に!?」
「うん、本当に。」
「じゃあ、本気で、問題を読んでみな。」
「あめが何こかあります。」
「ほらね。本気を出すと、違うやろ。」
その後、この間、自分から漢字プリントをやろうとしたときのことを褒めました。
「だけど、合格しなかった。」
「そんなこと、どうでもいい。合格したいと思ったことが大切なん。」
がんばれ!!
自分の道を切り拓くのは、自分自身でしかないのだから。
2時間勉強した後、
「先生、残り、家でやってきていい?」
と言って、Jくんは帰って行きました。
これからも、とんとん拍子にはいきません。でも、少しわかったかな、お母さんの願いが。
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